猿橋は橋脚の存在が無く、両岸から差出された桔木によって支えられて いる構造の特異さから、日本三奇橋のひとつに数えられています。所在は甲州街道沿い にあって、現在で言うとR20がその街道の筋をなぞっているかたちになります。 甲州街道は 江戸の時代には五街道の一角を成し、猿橋周辺も宿駅の1つとして栄えていました。 戦国の世でも軍事の重要拠点として、古くからの要の土地であったようです。現在、 R20自体は北の秩父山地と、南の丹沢山地とを 分かつように走っているので、神奈川方面からの行程では、 高低差で言うアップダウンの激しさもさほどではなく 自転車でも行けましたが、沿道はコンビニや定食屋などがほとんど無いので、 最低限しっかりとした前準備はしておきたいところです。 |
新猿橋西という交差点で折れると、すぐ橋の目前にリンクします。数台が可能な駐車場も備えてあります が、さらに奥に併設されている郷土資料館の脇にある駐車場の方が大型のスペースになっていました。 |
桂川が一番狭まった部分に架けてあり、実際、峡谷からの高径は31m もあり川底からの橋脚設置が事実上不可能だったのでしょう。そん な場合に、特に明治以前の時代には刎橋(はねばし)はよく用いられた 工法だったようです。全国にも数多あった、この 刎橋も近世以降は外国からの鉄筋技術の構築の普及で 次々と姿を消すことになり、現在は猿橋のみになっていす。名勝であり、かつ 非常に重要な文化遺産でもあります。 |
現在のR20には新猿橋が架けられており、橋の上から西方向を望むと 3つの架橋が確認できます。即ち、一番奥がR505、中央が名勝の猿橋、手前は 八ツ沢発電所一号水路橋になります。水路橋の歴史も古く、明治45年とあり鉄筋コンクリート 単一アーチ橋としては長さ41mを誇り、当時では国内最大の規模でした。 現在でも激しい水流が確認できる現役橋です。 |
そのまま、遊歩道を伝い公園を横切ると大月市郷土資料館に辿り着きます。 猿橋の説明や展示品は勿論、甲州街道や地域の担ってきた産業や文化など、とても興味深い内容ばかり ですので是非立ち寄ってみてください。入場料は¥100でした。 |
先ず入り口正面に鎮座するのは、猿橋の枕梁と行桁の部分です。 |
伝承では、この猿橋とは奈良時代に百済のシラコと呼ばれる人物が、 この地で猿が藤蔓を伝って対岸に渡った姿を見たことにヒントを得て 架橋したのが始まりだとされていますが、 実際、古文書で確認できる確実な実証では、約500年ほど前というのが最も古い記述のようです。 4本の桔木の設置 は、斜面に穴を掘って挿し込んだものではなく、先ず最低部の桔木を石や土砂で押さえ込み、 その上に同様に順次重ねていくという工程でした。 やや斜め上を向いており、結果として最上部の 架橋部はアーチを描くことになり、中央に盛り出した形状の視感が往来する人々に不安感を与えさせない 心理効果もあったのだといいます。 桂川峡谷一帯は、その昔、樹木の生い茂る猿や鹿が群れを 成していたという大幽谷だったようです。雨量も多く、多湿による対策なのでしょうか、桔木 の上にも腐食を防ぐ屋根を備えてあります。それでも木造橋であることから 、暫時、補強や修復は頻繁に 行われてきたようです。もっとも古い修復暦は延宝四年(1676)とあり、その後は28年に 1回の割合で架替えが行われてきました。 |
昭和59年の修復では、大型木材の部材入手が困難で 鋼製に変えられました。写真の行桁は現在のもので、 一見すると中心部を刳り貫き『エ』の字の鋼製の心棒を捻じ込んだかの様に 見えますが、実際は金属の周囲に4枚板を貼り合わせただけの構造です。 |
郷土資料館の2Fは宿場のジオラマや、 猿橋と浮絵師達との関わりあい、甲州街道の歴史や地域の産業や文化などが勉強できます。 |
桂川渓流は非常に水も澄んでおり、水面近くまで下れば目前に鮎やヒゴイ、黄マスなども 確認できます。 相模湖桂川を源泉とする相模川はそのまま下ると 相模湖まで辿り着きます。従って、神奈川方向にR20で沿っていく事は、 その行程に桂川とダムによって出来た人工巨大湖である相模湖、その湖畔沿道を仰ぎ見て 行くことになります。地味目な道路ですが信号も少なく蛇行路や橋、トンネル 等も多く景観も良いことから、かえって車のドライブとしては中々楽しい道になるかもしれません。 |
相模湖大橋の近くで、湖を覗いてみると湖面に巨大な 水の噴出を確認できました。モコモコと空気泡を含んで 盛り立つ水面は、人工装置である事は間違いありません。 |
後日、相模湖観光協会の方に電話で訊ねてみました。 「あの湧き水みたいな水流は何ですか?」 『はい、あれはアオコの発生を防ぐ水流装置ですよ』 「大きさを教えてください」 『7mの筒状装置で、直径は1,5mくらいですかね。 空気を含ませた水流を湖内に循環する 装置で、金魚飼育の際のエアーポンプ、あんな感じでとらえてください。 設置は昭和63年くらいから始まって、現在、 相模湖に各ポイントに7基ありますよ』 「アオコに対して効果はいかほどでしょうか?」 『かなりの高い水準で効果を上げています。 だいたい水温が高くなる季節、そう3月から10〜11月くらいまで 常時回す形でやってますよ』 「あれだけ、巨大な波紋だと・・・・・近付くのも禁止ですよね??」 『いえいえ、水流としては見た目ほど大きなものはないので、ボートで 近付いたりするのは可能ですよ』 「はうあっ!!」   話を聞いてるだけでも、 思わずブルってしまいジュニアが縮み上がる思いでした。 桂川の清流に反して、相模湖は 生活排水の流入による富栄養化を招いた状態にあり、アオコが発生し易い環境にあるようです。 装置の正式名はエアレーション(間欠式空気揚水筒)式水質浄化装置だそうです。 |